今泉俊郎著「黒い石の家の記憶 十五浜の天然スレート建築群&オカミ 記録写真集」

かつて桃生郡十五浜と呼ばれたこの地域には数多くの天然スレート建築が存在した。

明治維新後、明治政府の欧化政策により中央・都市には洋風建築が建てられ、それらの屋根を覆った屋根材の一つに天然スレートがあった。その天然スレートに適しているとして雄勝の硯石である粘板岩、通称、【玄昌石】が盛んに採掘され、天然スレ―トとして生産された。雄勝は天然スレートの一大生産地として発展した。

その雄勝では中央・都市の洋風建築とは違い、伝統の和風建築の屋根にいかに天然スレートを適合させ、また、外壁に応用しようかと天然スレート葺き職人たちは努力し、その成果を地域住民は享受し、謳歌して、ここに雄勝独自の天然スレート建築文化が形成され、開花した。天然スレートというヨーロッパ発の建築素材が、地理的には辺境である周縁のこの十五浜において、どのように受容され、展開されたかを見て頂きたい。

東日本大震災の津波により十五浜の多くは壊滅的な被害を受け、ここに収録した天然スレート建築の多くも海の藻屑となり消滅し、残った建築も災害危険区域にされたことにより、解体・撤去されたものもあった。

もう一つのテーマは、神棚と仏壇と座敷で構成される【オカミ】である。震災直後、無人で無音の浜で、瓦礫が散乱するなか、決定的な破壊と消失をまぬがれた一軒の住宅で、これを見た時の衝撃は忘れられない。【神と仏が同居する祈りの空間の様式と造形】を。

この時は、様々な想いが交錯し、シャッターを押せなかった。

(”はじめに”より抜粋)


2021年2月1日初版第1刷発行
2026年3月11日初版第2刷発行

発行者:今泉 俊郎 / 徳水博志
写真・文:今泉 俊郎
協力:畑山 千鶴
制作協力:m.s.s.books
印刷会社:株式会社 鈴木印刷所(石巻市)
定価 2,500円(税込)
A4縦 210×297 mm
ソフトカバー 78頁

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