みちのく潮風トレイル名取トレイルセンターにて写真展開催中(〜2022年3月27日(日)まで)
詳細はお知らせをご覧ください。https://yoko-jigen.com/20210922-2/

西宮神社/青森県八戸市 
小舟渡海岸/青森県八戸市 
大蛇漁港/青森県三戸郡階上町 
館神社/青森県三戸郡階上町 
階上岳放牧場/青森県三戸郡階上町 
寺下觀音/青森県三戸郡階上町 
戸類家漁港/岩手県九戸郡洋野町 
麦生集落歩道/岩手県久慈市 
玉川海岸/岩手県九戸郡野田村 
林道/岩手県九戸郡野田村 
太田名部水門/岩手県九戸郡普代村 
白井漁港/岩手県九戸郡普代村 
島越漁港/岩手県下閉伊郡田野畑村 
小本川/岩手県下閉伊郡岩泉町 
摂待の街並み/岩手県宮古市 
音部漁港/岩手県宮古市 
とどが崎/岩手県宮古市 
姉吉漁港/岩手県宮古市 
牛転峠/岩手県下閉伊郡山田町 
根浜海岸/岩手県釜石市 
箱崎半島/岩手県釜石市 
鍬台峠/岩手県釜石市 
潮目祭り/岩手県大船渡市 
秀っこねえ/岩手県大船渡市 
ハウルの船/岩手県大船渡市 
首崎灯台/岩手県大船渡市 
大船渡漁港/岩手県大船渡市 
大船渡漁港/岩手県大船渡市 
りんご畑/岩手県陸前高田市 
長磯浜/宮城県気仙沼市 
田束山/宮城県本吉郡三陸町 
大谷鉱山跡/宮城県気仙沼市 
長面浦/宮城県石巻市 
白銀神社/宮城県石巻市 
雄勝湾/宮城県石巻市 
野々島渡船場/宮城県塩竈市 
網地島/宮城県石巻市 
朴島航路/宮城県塩竈市 
陸奥総社宮/宮城県多賀城市 
避難丘/宮城県仙台市 
田園と住宅/宮城県名取市 
阿武隈川/宮城県岩沼市 
ビニールハウス/宮城県亘理郡亘理町 
山元町震災遺構中浜小学校/宮城県亘理郡山元町 
溜め池/宮城県亘理郡山元町 
真弓薬師/福島県相馬郡新地町 
相馬中村城/福島県相馬市 
宇多川/福島県相馬市
長い歩き旅をする度に、わざわざ「歩く」って何なのだろう。と、私はいつも思います。
歩くことで次第に見えてくるものは、あらかじめ期待していた景観の狭間にある、無数の名も知らぬ地点の重なりであり、そこにあるものは、飾りたてられたハレの風景ではなく、素顔のままの土地の姿です。
無数の地点の重なりが歪な線を描いて進む時、ハイカーは、慌ただしい日常の中で欠落してしまった空白を、一歩ずつ小さな点で埋めてゆき、予測を超えた出会いを重ねていきます。それはやがて、効率的な生活のために見捨てていた自分の世界観の一部を、少しずつ取り戻しているような、満たされた気持ちにしてくれるのです。
そんなハイカーは、周囲に何かをもたらすのでしょうか。長く歩くことにより、お化粧が剥がれ落ちて素直になってゆくハイカーは、どうやら素顔の土地の住人と自然に馴染みやすいようです。無自覚に退屈な日常とハイな非日常の空気とをかき回す、ちょっとスパイシーな存在になれたら嬉しいと思っています。
では、三陸地方を歩いて旅することは、何なのか。三陸沿岸部を縦断する「みちのく潮風トレイル」は、他のどのトレイルとも全く異なる性質を持っているため、その体験を消化するには少しばかり時間が必要でした。
「みちのく潮風トレイル」を歩く者は、震災がもたらしたものが、明も暗も様々な形となって残り、変化してゆく様子の目撃者とならざるを得ません。
三陸においては、震災によって奪われたもの、表層が洗い流された後に残ったもの、それによって浮かび上がってきたもの、その中から産み出されたもの、再び塗り固められて消えようとしているものなどが、今もそこここに混在していて、感情をかき乱されます。
自然はいつも圧倒的な存在であり、人の世がどうあろうとも、ただ淡々と作用と反作用を成し続けていること、それらを受け入れてなおそこで生き続ける人間の姿に、旅人は圧倒されるのです。
この土地で、人々は何を守ろうとしているだろうか、何を切り捨てようとしているだろうか。何が否応なく消えてゆこうとしているのか、決して消すことができないものは何なのだろう。
これまで空白地帯だった三陸に、小さな点を打ちながら思いを巡らせます。
「みちのく」が、私たち徒歩旅行者へ語りかけてきたことに、静かに耳を傾けたい。
それは我々の未来でもあるからです。
2021年10月3日