誰の手も届かないほど、どこまでも遠くへ飛んでいきたいと、空ばかり見上げていた時期があります。
その頃の私は、自分を取り巻く狭い世界の閉塞感から、とにかく逃げ出したくてたまりませんでした。溢れる情報に踊らされるだけの毎日に出口は見えず、未来は飽和する光に満ちた白い闇のようでした。進むべき道を見失い、宙をもがき、さまようように。もっと急いで、上へ昇らなければ置いて行かれてしまう!そんな焦りがあったのでしょうか。しかし、天高く羽ばたけるほどの逞しさは、私にはありませんでした。
都市の鳥は、大空を超えてどこにでも行けるはずなのに、人間に群がって生きていて、都市に暮らす人間にどこか似ているように見えます。そんな彼らの姿を、自分に重ねて見ていました。
羽ばたいているつもりで、実は無駄に疲れているだけではないかと気づいた時、何かが見えそうな気がしました。ただし、その“気付き”から先へ進むことができるのは、もっと先のことになるのですが。
2010年