ありがとうございました〜写真展「emu」Roonee 247 Fine Arts 2018年5月22日〜6月3日

お陰様で盛況のうちに写真展を終えることが出来ました。
ご来場下さいました皆様、ありがとうございました。

ここじゃおまえは余所者だ、居場所なんて無いからな。
背中に担いだ缶詰がなくなる前に、とっとと出て行けよ。

泥と蔓の絡み合う密林が、そう言って嗤っているように見えた。

GPSを片手に這いずり回るマヌケな二足歩行生物は、
本当ならどこか別の国に居るはずの、
飛べないうえに後ずさりもできない不器用な鳥類みたいだった。 

これらの単調な風景写真は、2016年10月~2017年4月にかけて、私がニュージーランドの最北端ケープレインガから最南端ブラフまでを、6ヵ月かけて歩きながら撮影したものです。

しかし私が表現したいのは、私の冒険談ではありません。
むしろこれらの写真は、退屈な日常生活を比喩しているものだと思っています。

6ヵ月もの長いトレッキングと聞けば、めくるめく大冒険であったに違いないと思われるでしょう。
でも現実は、ただ黙々と1日中歩き続けるだけの、単調な毎日の繰り返しであり、本質は日常生活と大して変わりません。

もちろん時には怖い出来事や、思いがけない感動もありました。
でもそれだって、日々の生活と同じでしょう。

そして地道な努力の結果、たどり着いたゴール地点で見たものは、
鈍色の空に突風の吹き荒れる、どん詰まりの海でした。
一瞬の達成感の後に襲ってきた寂しさと失望は、1年過ぎた今もはっきりと覚えています。

今また、ほぼ旅立ち前の日常に戻りました。
若くない私にとって、未来はもはや明るいものではありません。
それでも希望を失うことなく生きてゆけるのは、私が生き物である証だと思っています。

ニュージーランドの隣国、オーストラリアで出会ったちょっと不恰好な鳥「emu」のように、
空は飛べないけれど、泥くさく、ひたすら地を這い進めばいい。

都会の生活は、ある意味でアウトドアよりも過酷に感じます。
人間らしさを奪われてしまいそうで、時にはへこたれてしまいます。

でも私は機械じゃない。ヒトは生き物ですもの。

自分の生命力を信じて、明日へと歩み続けたいのです。

2018年5月28日
地現 葉子

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